一度聴いたら忘れられないキュートな歌声と、フックのあるキャッチーなメロディ。こう書くと一瞬かわいらしいバンドを想像する人もいるかもしれないが、彼らの力強く骨太な演奏とサウンドはそんな予想を軽く吹っ飛ばしてしまう。紅一点のVo./G.きみコを擁する4人組バンド・nano.RIPE。インディーズ時代から全国ツアーを重ねる中で鍛え上げてきた彼らのライブパフォーマンスと演奏力は、余計な言葉を必要としない説得力を持っている。昨年9月にシングル『パトリシア』でメジャーデビューを果たしてからも「そのあたりはインディーズの頃から変わらない感じがあります」(きみコ)との言葉通り、彼らの"芯"にあるモノは揺るぎない。

　ライブ感を前面に押し出したメジャー2ndシングル『フラッシュキーパー』(2010年12月)は、まさにnano.RIPEの真骨頂とも言える作品だった。だが、Dr.shinnが「演奏面の意識がガラっと変わってきました」と語るように、変わらないモノを持ちつつ彼らは今も進化を続けている。昨年1月にBa.アベノブユキ(以下、ノブ)を新メンバーとして迎えた現在の4人でメジャーデビュー後初のロングツアーも経て、「4人の考えがより近付いたというか、1つになってきた」(きみコ)と一体感を増してきているのだ。

　「バンドとしても人としても成長できたと同時に、音楽を始めた頃の気持ちや忘れちゃいけないモノを思い出した」(きみコ)という30本に及ぶツアーを行った。(3/12に予定されていた下北沢SHELTERツアーファイナルワンマンライブは5/16に延期となった)彼らの次なる動きとなるのが、4/20の3rdシングル『ハナノイロ』のリリースだ。タイトル曲は今春放送予定のTVアニメ『花咲くいろは』のオープニング主題歌に決定。「主題歌なので作品に合うモノにはしたかったけど、自分にとって嘘にならない曲を作りたかった」というきみコの言葉通り、楽曲自体はあくまでも"nano.RIPE"としか言いようがない。「きみコらしいんですけど、新しい面も見えた曲」(G.ササキジュン)というように、ドラマティックな曲展開には新たな一面も感じさせる。

　"何回だって間違えるけど終わりはしないなら　笑ってたいな"という歌詞はアニメのストーリーに重なるだけではなく、過去から現在そして未来へと続く彼らの姿勢を象徴しているのだろう。活動を続ける中で様々な苦境に直面しつつもポジティブな姿勢を失わずに進んできたバンドとしての歩みが、今の音や言葉の中に表れているのだ。「"カップリングに入っちゃっていいのかな？"って思うくらい贅沢な気がする」(ノブ)2曲も含め、キラーチューンが3曲揃った今作。ここから彼らが花開いていく、1つのターニングポイントになる。そんな確信にも似た予感を感じずにはいられない。