「じゃあ、第一の”信仰”は私、浅間・智ですね。
私、武蔵の神道代表なので、信仰と言ってもTsirhc系とは結構違うんですけど……。
でも、”信仰”の徳とは何かというと、基本は一つですね。それは、自分の中に”神”がいると信じることです」
皆が半歩退いた。浅間は笑顔で、
「怪しい話じゃないですよー。大丈夫ですよ-。鈴さん、表示枠で全く引いてませんけど、実はちょっと引いた方がいいかもですからね? ──ハイディは下がりすぎですからソレ」
どう言う事かというと、
「昔、人は通信手段も持たず、移動手段も脚だけで、明かりも、ろくな家も持っていませんでした。力ある夜盗や山賊が森に潜み、集落どころか、大都市でも襲われることがしばしばですし、飢饉や疫病もあった訳です。自分が大丈夫でも、親族や友人が亡くなることもあります。
どうしたらいいか解らなくなって、自分を見失ってしまうなんてこと、よくありました。
そういうとき、自分以外のものがそばにいて欲しい。でも、一人の時の方が多いものです。だから、信仰で「自分の中に神様がいる」と信じる訳です。
神様の存在は人間よりも上位なので、知覚出来ませんが、いることは”奇跡”などの現象で証明されていますし、人が存在できるのもその御陰です。
ゆえに、人は、一人の時や辛い時、自分の胸に手を当てて、己の中にいる神様にすがったり、感謝するんですね。また、罪を犯しそうな時も、内なる神を思って踏みとどまるんです。
そうやって、一人のときや、辛いことを乗り越えていく。これが”信仰”の徳です」
「この徳に選ばれた人は、孤独や辛いときには、自分は常に見守られているんだと、そう信じていって頂けると有り難いですね。ストーカーのことじゃないですよ?」
「浅間! もっとギャグ! もっと強いギャグ入れないと駄目よ! 人間的価値が無いわ!!」
「いい話なのに来ましたかあ──!? というか私の価値、何処にあります!?」
喜美が、無言で、胸のあたりの宙に両手で円弧を描くが、浅間は無視した。