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「第五の徳……」

 と、ミトツダイラが呟いた時だった。カウンターにて、P-01sから焼き損ねパンの詰め合わせセットを貰っていた正純が、小さな声でこう言った。

「新任の第五特務が第五の徳を、か……」

 皆が、一般客も含めて容赦なく静まって、正純が眉を立てて振り返る。

「な、何だそのリアクション!? というか聞いてんなよお前ら!!」

「Jud.、……仕方ないですわね。ええ、聞こえてしまいましたし」

 ミトツダイラは、一息を入れて言う。

「正義の徳は、正しい判断を持つと言う事ですの。ただ、中世の時代においては、各国や各都市が戦争を行っていたような状態で、正義なんてたくさんありすぎましたわね。

 だから、ここでいう正義とは、普通に考えられる正義とはちょっと違いますの」

 ナイトが、片手を挙げて、不安そうにこう言った。

「実は人命で”マサヨシ”とか……?」

「ナイト、これ、一応は欧州直伝の徳だから。それはないと思うのね」

「ナイトだからそれはないと、か……」

 正純の言葉に皆が沈黙した。ややあってからミトツダイラが咳払いし、

「つまり、正義とは、不正を行わないこと。盗みや殺傷、ルール違反などをしない、……自分に対しての正義ということですのね。
 ”私は悪にならない”、これは小さいようでいて、昔の、法律や警備もままならない時代においては、大きな正義だったんですの。この徳を第一に考える人は、自分の規律に優れた人と、そんな風に言えますのね」

「規律に優れた人はいつも……」

「キリっとしてるとか言ったら駄目ですのよ正純! 規律! 規律を!!」

「言ってないだろ未遂だろ!?」

 未遂じゃ駄目じゃないですかねー、とアデーレが小さくつぶやき、ミトツダイラも頷く。