実家が湯屋で、朝の仕事中ということもあり、表示枠で参加となった鈴がいる。浅間が見るに、いつもの朝仕事として、彼女は番台の上から御高説に参加だ。そして鈴は、
『え、ええと、第六の、徳? ……”勇気”?』
「Jud.、そうよ! 鈴! ガっと説明しちゃいなさい! ええ、いつも湯屋仕事で番台に座ってる鈴にとっては、男共の勇気が解ってる筈よ!? そうでしょ!? ストロ──ング!」
喜美の声に、店内の男衆が全員下を向いて沈黙した。が、鈴は、
『わ、私、目、見えないし、御仕事だから、気に、しない、し』
店内の男衆が全員ガッツポーズをとる。が、喜美はうんうん、と頷き、
「気にするほどの勇気は存在しないってことね……」
男衆がガッツポーズのまま、テーブルに伏した。小さな泣き声が聞こえ始めることも気にせず、喜美が笑みで問いかける。
「愚弟とか、どう?」
『ぁえ!? あ、え、あ、あの、その、”音鳴りさん”の設定、不感知にしてる、から』
「義弟には勇気出せてないのね? フフ、それじゃ駄目よ?」
『い、や、その、あのっ』
「頑張るのよ……! ええ、愚弟を感知してチェーンジ・ストローング・オンバシラァ──! って叫ぶの! いい!? 愚弟いなくても叫ぶと男湯の士気がみるみるあがるわよ! ほら復唱!」
『う、うん……? うん? チェン、ジ、ストロー、オンバシ、ラ?』
「だ、駄目です鈴さん! 小さくしちゃダメージ大きいです! 更に疑問形なんて!」
「お前ホントに巫女か!?」
そして表示枠の中、首をかしげながら鈴が言う。
皆のツッコミを、浅間は喜美と踊って避けた。
『ゆ、”勇気”って、何?』
喜美が真顔で空中に両手で縦長を形作りながらこちらを見ているが、浅間は無視した。
「正義とか、慈愛とか、賢明とか、他の徳を発揮する時、迷わない事ですよ」