「NEO FANTASIA」アルバムレビュー(総括)
久々に見事なコンセプトアルバムを聴きました。
一つ一つの楽曲が独立したアトラクションとして完成していながら、テーマパークの順路のように順番に聴いて行くことで、その世界観全てを堪能できる作りになっています。だから、楽曲を仕切る僅かな無音、そしてその長ささえも、このアルバムにおいては重要な役目を果たしていると思います。
私たちを瞬時に未知の別世界へと連れて行ってくれるのが音楽の力です。このアルバムに収められている楽曲たちは、そうした強い力でリスナーのイマジネーションの扉を無限に開け放ってくれることでしょう。
ぜひ、何度でも訪れてみてください。
01: The immortal kingdom
晴れ渡った青空に高らかに響き渡るファンファーレ。ストリングスやコーラス隊に、フルート、ハープ、ティンパニの音まで聴こえてきます。
ここは夢の国。みんな輝くような笑顔でゲートをくぐって、眩しそうに見上げます。
お出迎えは「天空の歌姫」。塔の頂きで魔法の杖をさっと振ると、キラキラと光の粉雪が降ってきました。
さあ、一緒に楽しもう!ここは喜びと幸せの世界。
NEO FANTASIAは「誰の中にもある夢の場所」。
入り口で感じる駆け出したくなる気持ち、これから始まる幸せな記憶は、純粋な結晶となり、永遠に輝き続けるのです。
02: TREASURE WORLD
夢のゲートを抜けて進んだ先で、突然始まるパレードの演奏。
シルクハットにステッキの茅原実里に続いて、陽気なサックス隊も左右に揺れて、そこに絡むギターのフレーズもご機嫌です。
自然にリズムに乗ってきたと思ったら、広場のみんなが次々と踊り出しました。
女子高生たちがチャールストンのステップをキメる横で、背の高いお兄さんは隣の女性の手をとって、フレッド・アステアのように軽やかに舞います。着ぐるみも子供たちもリズムにシンクロ。あっけにとられて周りを見渡すと、そこはフラッシュモブ&ミュージカル!!
大団円、そして音が消えてふと我に返ると、広場は元通り。あれ?夢だったの?
そんなShow Timeへご招待♪
03: SELF PRODUCER
「ねぇねぇこっちだよー!」
さっきまで広場で楽しそうに踊っていた女子高生の仲良しグループです。思い思いのお気に入りグッズで制服を飾り、ジェットコースター乗り場にやって来ました。
可愛いは正義!これが今日のコンセプト。
話題はいつも恋バナ。そんな彼女たちの限りなく愉しそうな絶叫が聴こえてきます。
この曲に乗り込んだ途端、そんな光景が開けてきました。
コーナーを駆け抜ける遠心力さえ感じられるキャッチーでハッピーなチューンです。
04: TOON→GO→ROUND!
デジロックなイントロが流れると、暗転のステージにぱっとスポットライト、茅原実里がポップアップ!楽しいエレクトリカルショーの始まりです。
様々な色彩の電飾が点滅し、観覧車のようにクルクル回りだすと、ディスプレイのキャラクターたちに命が吹き込まれ、アニメーションダンスを踊り始めます。
そう、ここはバーチャルも飛び越え、リアルなんか追いつかないほどイケてるFairground Attration。
NI-HONG-GOもデジタルに分解/再構成、ビートに乗ったシャープなボーカルが心地よく耳にPLAY。ぜひ「遊園地」の飛びっきりクールな発音を聴いてみてください。
05: 1st STORY
半音下げチューニングで開放弦の響きを効かせたギターのアルペジオ。
左耳から吹き抜ける風を感じた瞬間、一斉に元気なメンバーがバンドインしてきました。
この曲で見えるものは、ボーカルに向かって腕を振っているオーディエンス。そう、ステージ上から見る景色なんです。
ベーシストはフレーズ同様動き回り、キーボーディストはグリッサンド、ドラマーはシンコペーションを気持ちよくキメ、ギタリストはストロークアクションで魅せる。メンバーの笑顔は鏡で映したように観客一人ひとりの笑顔になって、みのりんの野外ライブにアットホームな空間が出来上がります。
「青春」のストーリーが凝縮されたような一曲です。
06: endless voyage
幾多の困難や戦闘も切り抜け、運命という目的地へ向かうSFライド・アトラクション。
力強く歌われるのは、「2013年宇宙の旅」に旅立つアナタの主題歌です。
イントロで一気にワープした先には、人類の叡智や探査能力を遥かに超える神秘の宇宙が拡がります。冒険のストーリーとVOYAGERの操縦は、リスナーの想像力次第。
シンセサイザーがレーザーのように飛び交う中、左右のギターが推進動力源となって突き進みます。さて、主人公の運命や如何に!?
To be continued…
07: 真白き城の物語
むかしむかし 真っ白な冬のお城に
それはそれは 雪のように美しいお姫さまが
氷の中で 春を待ちながら眠っていました…
そんな語り出しで始まる、絵本のような世界が紡ぎだされます。
純白のページをめくっていくと、紙の仕掛けで出来たお城や白馬が飛び出してきます。
お姫さまの言霊は遠い国にも届き、やがて春の息吹がこの絵本に色彩を与えていきます。
そしてお姫さまは「あなた」と巡り会うのです。
08: Celestial Diva
物悲しい旋律を謳い上げる真っ直ぐな声。何度聴き返してもゾクっとするような至高の美しさを覚えます。ドラマチックな展開に最後まで引っ張られ、後半のサビメロのタメのパートでは目を閉じ歌いながら聴いています。
個人的にも思い入れがあるこの曲は、「Animelo Summer Live 2013-FLAG NINE-」のオープニングとして、「茅原実里×宝野アリカ」のコラボで歌っていただきました。
ライブの導入には、テーマコンセプトを表現したアニメーションを採用したのですが、その主人公の女騎士は中世の城を舞台に槍で戦いました。宿命を背負う彼女の瞳には未来に続く宇宙が拡がる、という設定があり、この曲のイメージに世界観が繋がったのです。
コンセプトアルバムのように創ったライブのオープニングと、天空の歌姫を謳ったこの曲が出会えたのは、今でも必然だったと思っています。
09: Lonely Doll
まるでセピア色の写真に収められた欧羅巴の街並が見えてくるような幻想的小品です。
「碧い瞳の君」を待ち続ける「紅い瞳の私」は、ガラスケースの中で踊るオルゴール人形。ゼンマイ仕掛けの彼女がいつも奏でる調べは、あの名曲なのかも知れません。
私には、愛し合う相手と引き裂かれてしまった貴族の娘と舞姫、二人の「エリーゼ」の悲恋の物語にも重なって聴こえてきました。
「世界中で一人 好きだった君を
可愛い女の子が 連れ去ってしまった」
その震えた言葉と息遣いには、絶望と孤独が深く表現されています。
10: この世界は僕らを待っていた
ストリングスのフレーズが、押し寄せる波のように前へ遠くへと、吹き抜ける潮風のように高く空へと僕らを運んでくれる。晴れ渡った海を見下ろすとそこにはジャンプするイルカの群れ。
自然を肌で感じられるような極上に気持ちよいサウンド
音楽って一瞬で美しい世界へ連れて行ってくれるんだなぁ、と改めて感じました。
青い海が良く似合う茅原実里にぴったりな地球賛歌です。
11: ZONE//ALONE
一糸乱れぬボウイングでカウンターメロディを繰り出すストリングス、全く遠慮せずフルパワーで高密度の演奏を続けるバンド、そしてファルセットを多用しつつも突き貫くように強く撃ち返すボーカル
この絶妙の均衡で成立する三つ巴の攻防、これを堪能するのがこの曲の醍醐味ではないかなと思います。
12: 境界の彼方
いきなり歌い出しで始まり一気に沸点へ。でもそのドライブ感はずっと続き、重厚なストリングス、生ピアノのバンギング、そしてサビの歌唱でぐっと感情を掴まれます。
初めて聴いたとき、単純なABサビではない変則的な構成に惹かれつつ、どこか懐かしいような青春を感じるメロディに、普通のアニソンとは違う風合いを感じました。
歌詞やサウンドやイメージを意識しながら、繰り返し聴くうちに、より鮮明にこれは名曲だ、というのがきっとわかるはずです。噛むほどに美味しくなっていく「スルメ曲」ではないでしょうか。
13: NEO FANTASIA
薄暗いシンフォニーホール、調弦がやがて不穏なハーモニーとなり黒い霧が辺りに立ち込める。印象的なドラムのリズムパターンとともに霧が消え、視界が開けるとそこには荒涼とした砂漠が拡がる。それは約束の地。
アルバムの表題曲は、ジャケットの華やかなイメージとはかけ離れている、そう思えるかも知れません。
私たちが生きている場所は、リアルなのかファンタジーなのか、始まりに向かっているのか終わりに向かっているのか?「新しき幻想曲」は胡蝶の夢の如く私たちを惑わすのです。
14: Neverending Dream
ファンファーレで迎えられた同じ場所に、戻ってきました。
もう日も暮れて、楽しい時間ともお別れ。
みんな夢の国の素敵な思い出を持って家路に着くのです。
ストリングスとオーボエが暖炉のような淡い光で優しく包みます。
ピッコロは、またおいで、とさえずる小鳥のようです。
名残惜しさと共に夢のゲートを出る一歩手前で、歌姫の声が聴こえました。
「ありがとう」