02:「TREASURE WORLD」

作詞:茅原実里 作曲:俊龍 編曲:藤田淳平(Elements Garden)

澄川龍一

ゲートを潜れば、そこは別世界。「The immortal kingdom」から地続きで聴かれるのは、自身初であろうビッグ・バンド・サウンド。それを基調に、『NEO FANTASIA』な世界観を一曲に凝縮したかのような、ハレの舞台が展開されていく。キラキラとしたテーマパークをぐるりと急ぎ足で巡るように、ホーンやコーラスが賑やかでスリリングに展開されていくなか、その“楽しさ”を集めた茅原のボーカルが素晴らしい。また彼女のペンによる、過去の作品タイトルが散りばめられた歌詞もまたテーマパーク的でグッド!

冨田明宏

「The immortal kingdom」の延長線上にあるような、ヴォードヴィルなムード満載のジャズ・ナンバー。まるで喜劇的なミュージカルのスタンダードのようでもあり、目まぐるしく移り変わる場面に合わせて、茅原の歌声が表情豊かに変化していくのを耳で追うだけでも楽しい。コミカルな演技力で多彩なシーンに華やかな歌声を与えていく様子は、さすが役者である。俊龍の描き出した緩急効かせたメロディラインの素晴らしさもさることながら、ジャズの王道を貴重としながら、ジャンルレスに遊び心を盛り込んだElements Garden藤田淳平のアレンジにも思わず唸る。作詞は茅原自身の手によるもので、自らの過去作品に関連するキーワードが言葉遊び的に散りばめられているので、ぜひ探してみて欲しい(ネタバレになるので敢えて詳細は割愛!)。これまでの音楽活動の軌跡を辿りながら、その文脈の先にある、さらなるエンターテイメントへと歩みを進めた彼女だからこそ書くことができた歌詞だと言えるだろう。

西原史顕

ゴージャスなオーケストラ編成からゴージャスなビッグバンドへ。大胆にサウンドを切り替え、ガラリと雰囲気を変えてきた繋がりに少々面食らった「TREASURE WORLD」は、とことん陽気なステージソング。扉を進んだその先に、いきなりマジカル・ショウタイムが用意されていたという感覚だ。茅原実里の突き抜けた明るさをここまでストレートに感じられるのも珍しい。“恥じらい捨てて 深呼吸したらLets Go!!”。そうそう、夢の国へと飛び込んだからには我々も照れは捨てたほうがいい。このアルバムは約60分。その間くらいは我を忘れて楽しんでいこう。聴き手をさらに作品世界へと誘う役割を背負ったリードトラックを、茅原実里が自ら作詞している意義も忘れてはならない。

吉田尚記

そうそう!歌って、「歌え!!」と命令形で言われるもんじゃなくて、楽しそうに歌ってる人がいるから、一緒に歌い出したくなってしまう、ってものですよねー。「うんめい」って言ってるところが「ぅふんめい」と、ちょっと空気を含んだような発音なところが、ワタシ的にはクラっと来るポイント。

齋藤光二

夢のゲートを抜けて進んだ先で、突然始まるパレードの演奏。 シルクハットにステッキの茅原実里に続いて、陽気なサックス隊も左右に揺れて、そこに絡むギターのフレーズもご機嫌です。 自然にリズムに乗ってきたと思ったら、広場のみんなが次々と踊り出しました。 女子高生たちがチャールストンのステップをキメる横で、背の高いお兄さんは隣の女性の手をとって、フレッド・アステアのように軽やかに舞います。着ぐるみも子供たちもリズムにシンクロ。あっけにとられて周りを見渡すと、そこはフラッシュモブ&ミュージカル!! 大団円、そして音が消えてふと我に返ると、広場は元通り。あれ?夢だったの? そんなShow Timeへご招待♪

クロスレビュアー

>> 澄川龍一
アニメ音楽誌「リスアニ!」副編集長。編集や執筆のほか、イベント司会など行う。
>> 冨田明宏
音楽評論家、ラジオMC。アニメ誌や音楽誌での執筆や連載、『リスアニ!』の 企画/メイン・ライティングを担当。
>> 西原史顕
アニメ音楽誌「リスアニ!」編集長。同誌からマルチ展開したLIVEやWEB、TV番 組などの制作にも携わる。
>> 吉田尚記
『ミュ~コミ+プラス』AM1242(月)~(木)24:00-24:53
パーソナリティ、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。
>> 齋藤光二
アニメロサマーライブ・ジェネラルプロデューサー。通称「齋藤P」。