澄川龍一
アルバムのクライマックスに用意された表題曲は、多くのアニメ作品での音楽を手掛ける現在もっとも旬なクリエイター、澤野弘之が作曲・編曲で参加。ファナティックなストリングスから幕を開けるこの曲、ロックとオーケストレーションが融合した澤野らしいサウンドを、茅原による地に足をつけてまっすぐ前を見据えた力強い歌唱が包み込んだ感動的な仕上がりだ。そんなカオスから輝かしい未来へ向かうような曲構成もそうだが、畑による歌詞も、偶然にも前曲でも歌われた“希望”や“未来”が、ここではもっと大きく強固に示されている。本作を経て、茅原がまた“NEO AREA”へと向かっていることをシンプルに、しかしもっとも雄弁に語っているようだ。
冨田明宏
調律をするストリングス隊。しかしその音色たちが徐々に意思を持ち始め、この物語を終演へと導き始める。謎めいたイントロダクションによって引き上げられた我々の期待感を受け止めるのは、『機動戦士ガンダムU.C』や『ギルティクラウン』、そして『進撃の巨人』などの劇伴を手がけたことで今最も注目を集めている音楽家・澤野弘之。彼が茅原実里のために生み出したのは、メロディアスで、荘厳で、ファンタジックなオルタナティヴ・ロック・サウンドだった。このあまりにも斬新な展開は予想がつかないばかりか、まだ誰も見たことのないポップソングの可能性をプレゼンしているような、そんな野心すら感じさせる。そしてアルバム・タイトル曲に相応しい、ダイナミックで立体的な音像が先鋭的で、実に素晴らしい。この曲に畑亜貴が与えた歌詞は、茅原実里から聴き手に向けられた、これから訪れる未来への決意表明のようにも感じられた。
西原史顕
アルバムタイトルを冠した「NEO FANTASIA」。まるでこれからオーケストラ・コンサートが始まるかのような緊張感をもたらすイントロから、〈ロック〉〈エレクトロニカ〉〈民族〉そしてその〈シンフォニー〉を見事に調和させた壮大なサウンドが広がり、僕らの意識はまだ見ぬ世界へと飛ばされる。〈希望〉のさらにその先にあったのは、人の理を超越したエリシオン。神々に愛された人間が集う至福者の島が、今アルバム(=夢の国)の到達点である。アルバム終盤の疾走がオケアノスからエリシオンへと渡る旅だったのだと、M10に無理矢理な符合を持たせてニヤリとしながら、アルバム最大のテーマが〈夢の国における至福〉であったと思い至る。なんという一貫性……様々な正負の感情を表現することで、僕たちを愛と平和による幸福の世界へ連れて行く。これはM1のときに感じた茅原実里がアーティストとして積み上げてきた歩みに対する信頼と寸分も違わないではないか。思わず天を仰いでしまった一曲である。
吉田尚記
そして戦いの末に現れたのは、同じ目線の存在ではなく、超越した見上げるような存在。ここで歌っている主体は、人ではないのはもちろん、もう、世界そのもの。茅原実里さんの神々しさ、女神感、全開!!!
齋藤光二
薄暗いシンフォニーホール、調弦がやがて不穏なハーモニーとなり黒い霧が辺りに立ち込める。印象的なドラムのリズムパターンとともに霧が消え、視界が開けるとそこには荒涼とした砂漠が拡がる。それは約束の地。
アルバムの表題曲は、ジャケットの華やかなイメージとはかけ離れている、そう思えるかも知れません。
私たちが生きている場所は、リアルなのかファンタジーなのか、始まりに向かっているのか終わりに向かっているのか?「新しき幻想曲」は胡蝶の夢の如く私たちを惑わすのです。