14:「Neverending Dream」

作詞:茅原実里 作曲/編曲:Evan Call(Elements Garden)

澄川龍一

楽しく、重厚で、そして大いなる感動に満ち溢れた『NEO FANTASIA』の世界もいよいよフィナーレ。Elements Gardenのあらたな逸材、Evan Callによる穏やかなオーケストラによるアウトロは、ハレの高揚感を冷ますようでもあり、本作が終わってしまういくばくかのうら寂しさもある。そして曲の終盤、例えばゲートを潜って現実の世界に戻る瞬間、ふとうしろを振り向くと聴こえる、「会いに来てね 待ってるよ 会いに行くよ 待っててね」というみのりんからのメッセージ……なんとも粋な演出じゃないか。そう、次は『NEO FANTASIA』の続きに僕らが会いに行く番なのだ。

冨田明宏

そして、夢は静かに終わりを告げる。残念なことに、徐々に日常という現実が目の前に迫ってきてしまうわけだが、このテーマ・パークは最後まで我々に対する気配りを忘れない。ざわつく心を優しく包み込んでくれるのは、どこか懐かしくて、温かくて、優しいメロディ。Elements Gardenの若き俊英Evan Callが、美しいオーケストレーションでこの華麗なるエンターテイメント作品に幕引きを行う。これまでに堪能した13曲のアトラクションの余韻に浸る中で、センチメンタルで感傷的な心を癒やすように歌われる「いつの日もこの場所に」「会いに来てね」「会いに行くよ」の歌声。夢の世界は心地良いが、いつか必ず終わりがやってくる。しかし、いつでもまたここに帰ってくればいいのだと、茅原実里はこの“終わらない夢”に心を託し、語りかけている。音楽による完璧な夢を見せてくれた本作は、同時に“現実と向き合う勇気”も教えてくれていたのかもしれない。まるで映画1本を観終えたような充実感とともに、『NEO FANTASIA』は終演した。

西原史顕

非日常から日常へ。でも約60分の夢の旅は、僕らの心に確かな足跡を残していった。何かが芽生え、何かを変えられそうな予感。「Neverending Dream」というタイトルどおり、夢を終わらす必要はない。大切なのは〈信じ想い続けること〉だということは、今アルバムを通して十分に学んだことだ。それに茅原実里もまた“会いにいくよ”と言ってくれているではないか。この木管楽器と金管楽器が心地よい静かなフィナーレは再会を約束した別れであり、つまりは待ってくれている人がいるという、最高の幸せの調べなのである。

吉田尚記

もう、何もいうことはないでしょう。テーマパーク、というテーマで作られていること、テーマパークに遊びに来ていたことすら、夢中にさせられて、忘れていました。閉園ギリギリになっていることすら、3分も経ってボーカルが登場するまで気が付かないほど。アナウンサーでは絶対に出来ない、曲線で美しく彩るような最後の「会いにゆくよ、待っててね」。完璧、とは、こういうことを言うのでしょう!

齋藤光二

ファンファーレで迎えられた同じ場所に、戻ってきました。 もう日も暮れて、楽しい時間ともお別れ。 みんな夢の国の素敵な思い出を持って家路に着くのです。 ストリングスとオーボエが暖炉のような淡い光で優しく包みます。 ピッコロは、またおいで、とさえずる小鳥のようです。 名残惜しさと共に夢のゲートを出る一歩手前で、歌姫の声が聴こえました。
「ありがとう」

クロスレビュアー

>> 澄川龍一
アニメ音楽誌「リスアニ!」副編集長。編集や執筆のほか、イベント司会など行う。
>> 冨田明宏
音楽評論家、ラジオMC。アニメ誌や音楽誌での執筆や連載、『リスアニ!』の 企画/メイン・ライティングを担当。
>> 西原史顕
アニメ音楽誌「リスアニ!」編集長。同誌からマルチ展開したLIVEやWEB、TV番 組などの制作にも携わる。
>> 吉田尚記
『ミュ~コミ+プラス』AM1242(月)~(木)24:00-24:53
パーソナリティ、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。
>> 齋藤光二
アニメロサマーライブ・ジェネラルプロデューサー。通称「齋藤P」。