澄川龍一
ストレートなバンド・サウンドと、それにも増したまっすぐなメッセージが胸を打つロッキンな一曲。宮崎 誠らしい爽やかで疾走感のあるメロディラインを心地良く歌う茅原のポジティブな魅力が存分に打ち出されているのだけど、またシンプルなサウンドのなかで茅原が書いた歌詞から見える、前を見据えた輝きが特に際立つ。それもあって全体的にアッパーではあるけど、肩肘の張らない歌唱が聴かれる。さまざまなステージでファンと喜びを共有した彼女の、現在のピュアな気持ちがしっかりと封じ込められているようだ。
冨田明宏
この楽曲を聴いたとき、2000年代中期にアメリカのインディー・ロック・シーンで流行した〈ピアノ・エモ〉というジャンルのことがふと脳裏を過(よぎ)った。疾走感と切なさが激しく交錯する、叙情的で“エモい”このロック・サウンドは、昨今ではやなぎなぎを要した第二期supercellが代表的なアーティストと言えるかもしれない。この楽曲が持つ、どこまでも空に向かって駆け上がっていけそうな解放感と、聴くほどに心が鼓舞されていくような昂揚感、そしてこの焦燥的な青春感は、緻密なバンド・アンサンブルの中で存在感を出しているピアノの旋律と、まっすぐ未来に向かって伸びていくような、茅原の雑味のない清々しいまでの歌声によって生まれている。茅原の綴った歌詞と歌声の快活な響きは、どこまでもストレートで、どこまでもポジティヴだ。
西原史顕
楽しさがMAXを迎えたときにふと訪れる、心穏やかなひと時。夢の国に足を踏み入れて以降、じわじわとスピードアップしてきた鼓動を一度落ち着かせる役割を、この「1st STORY」は担う。隣に大切な人の体温を感じながら、自分の足元を見つめたり、天を仰いでみたり……うしろを振り返ってみたり。茅原実里が手掛けた詞は具体的で映像的だ。しかし僕たち聴き手はどの名詞にも、動詞にも、形容詞にも自分の想い想いのシーンを当てはめることができる。人には歴史があり、それぞれの経験があるからだ。だからこそであろう。過去も未来も現在も、あなたのすべてが“かけがえない愛の物語”と歌われると切なくなる。そんな彼女の温かな心、優しさが逆につらい。爽やかで清涼な風を感じつつ、心のどこかがえぐられてしまう。
吉田尚記
今まではアトラクションの楽しませてくれるキャストだった茅原さんが、突然、隣の席に座ってくれた錯覚が……!いや、錯覚なのは間違いないんですけど、きいてると、そういうふうにしか、思えないんですよ。妄想家で、すいません……!!
齋藤光二
半音下げチューニングで開放弦の響きを効かせたギターのアルペジオ。
左耳から吹き抜ける風を感じた瞬間、一斉に元気なメンバーがバンドインしてきました。
この曲で見えるものは、ボーカルに向かって腕を振っているオーディエンス。そう、ステージ上から見る景色なんです。
ベーシストはフレーズ同様動き回り、キーボーディストはグリッサンド、ドラマーはシンコペーションを気持ちよくキメ、ギタリストはストロークアクションで魅せる。メンバーの笑顔は鏡で映したように観客一人ひとりの笑顔になって、みのりんの野外ライブにアットホームな空間が出来上がります。
「青春」のストーリーが凝縮されたような一曲です。